2025/04/30

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中央研究院、がん細胞転移のカギとなる遺伝子を発見

2018/05/03
中央研究院が、がん細胞転移のカギとなる遺伝子、PSPC1を世界で初めて発見。6割から7割のがんの転移を誘発する元凶の1つで、発見は大きなブレイクスルーだという。左は中央研究院の周玉山研究員。(中央社)
台湾の最高学術研究機関、中央研究院が8年を超える研究の末、がん細胞転移のカギとなる遺伝子、PSPC1を世界で初めて発見した。これは6割から7割のがんの転移を誘発する元凶の1つで、その研究成果は科学界にとっての大きなブレイクスルーだという。
 
中央研究院バイオ医療研究所の周玉山研究員によれば、研究チームは8年から10年を費やして、Paraspeckle component1(PSPC1)という遺伝子を発見。同遺伝子は専らがん細胞の転移を主導するばかりでなく、他の遺伝子の機能をコントロールすることでがん細胞の死滅を阻み、その細胞周期を延ばすという。がんの6割から7割は後期に入ると、腫瘍細胞の中に大量のPSPC1による働きが現れる。こうしたがんには乳がん、肝臓がん、肺がん、前立腺がんなど一般に多く見られるがんが含まれる。
 
PSPC1はがん細胞の増殖を促すのみならず、規則正しくそろっている細胞を移動可能な細胞へと変え、がんの転移を引き起こす。また、がん細胞を「幹細胞化」し、それに成長力並びに薬物への抵抗力をもたらす。そしてさらには、本来、細胞周期を専門に司る「トランスフォーミング増殖因子(TGF-β1)」が、がん細胞の生存を促進するようにしてしまう。
 
正常な細胞の中ならば、「TGF-β1」は細胞の増殖を抑制すると共にその死滅を促すが、人ががんに罹り、体内におけるPSPC1の働きが強まると、「TGF-β1」の機能が、がん細胞の生存と成長を促すように変化するのである。
 
今回の研究で明らかになったPSPC1の機能、並びにがんの転移における「TGF-β1」の働きはいずれも科学界の大きなブレイクスルーで、この研究成果は今年4月に国際的な生命科学誌、「Nature Cell Biology」で発表された。研究チームはすでにPSPC1に対する抑制物質を突き止めており、将来的ながん治療薬の開発に応用できると期待されている。ただ、実際にがん治療に用いられるまでにはさらに10年から20年の研究が必要だとのこと。
 
この研究成果に関する論文のタイトルは、「PSPC1 mediates TGF-β1 autocrine signalling and Smad2/3 target switching to promote EMT, stemness and metastasis」。
 

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